容疑者かい!?
助手席で缶ビールを飲みながらの弟と帰宅途中の出来事だった。
後ろの方から何やら賑やかな声がスピーカーを通して聞こえてくる。
ルームミラーで確認すると、赤色灯を回しながら乗用車がすぐ後ろにへばり付いている。
急いでラジオのボリュームを下げ、その声を聞いてみると
『○○の運転手さん、車を左に寄せて止まって下さい。』
と言っている。
この車じゃん・・・。
ハザードを出して左に止まると、後ろから警察手帳を片手に私服の刑事がにこやかにやってきた。
「何?オレ?何か違反したの?」
『お手数かけて申し訳ありません。違反というほどの違反じゃないんですけど、右側のストップランプが切れてるのご存じでした?。』
「いや?知らないけど、切れてるの?。」
『ちょっと確認してもらっていいですか?。』
そう言われたので、車から降りて後ろに回った。
刑事さんがブレーキを踏んでも、右側のランプは点灯しなかった。
「ホントだ切れてる・・・全然気がつかなかった。」
『チョット免許証見せていただいてよろしいですか?。』
もう何年もゴールドの免許証を渡すと、覆面パトの中で待機してるもう一人の刑事に、小走りでそれを渡しにいった。
すぐに引き返して来たので
「点数、何点引かれるんだっけ?」
そう聞くと
『あ、今回は点数はいいんです。それより、協力していただきたいことがあるんですけど・・・・。』
パトの刑事に目をやると、免許証を見ながら何処かと何らかの確認をとってる様子が伺えた。
「どんな協力すればいいの?協力するよ。」
『そうですか、ありがとうございます。』
詳細はこうだった。
もう何年も前、ご存じの方も居ると思うが、世田谷の上祖師谷で一家4人の惨殺事件があった。
事件の詳細はコチラ。http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/jiken/jikenbo/seijo/seijo.htm
その刑事さんによると、警察がふがいないため、まだ犯人を捕まえることが出来ないのだと嘆いていた。
そこで、色んな人に、チョットした事でも確認をとって協力してもらってるとのことだった。
「そんな事ならお安いご用です。それで、協力って指紋とればいいの?」
『はい、そうなんですが、申し訳ないです。』
ホントに申し訳なさそうだった。
コッチは手の指10本全部指紋をとるつもりでいたら、右の親指1個でいいのだと言う。
「こっちのは?」
そう言って助手席の弟を指さすと
『あ、そちらさんは結構です。』
「何?せっかく二人潰れるのに・・・じゃあ、よっぽどオレの格好が刑事さんの思ってる犯人像に似通ってたんだ?。」
『いや、そういう訳じゃないんです。』
とのこと。
因みに、その時の私の格好はというと、ニット帽を目深に被り、顔の半分以上が隠れるような使い捨てマスク。よほどの知り合いでもない限り誰だか分からない風貌。
これじゃ怪しまれても仕方ないか?
でもなあ・・弟の右手親指の指紋とるくらい大して時間はかからないのに。
やっぱり風貌で怪しまれたんだだろうキット。
別れ際には、その刑事さん
『お手数かけて申し訳ありませんでした。ご協力ありがとうございました。ストップランプの交換だけ宜しくお願いします。』
そう言って免許を返してくれた。
次の日
「こいつ、殺人事件の犯人に間違われたんだぜ!」
弟が笑いながら言いふらすこと・・・・(ー_ー;)
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